抄録
光化学系I循環的電子伝達経路に機能する高等植物葉緑体NDH (NAD(P)H dehydrogenase) は、葉緑体ゲノムコードの11サブユニットおよび核ゲノムコードの3つ以上のサブユニットから構成される巨大で複雑なタンパク質複合体である。しかしながら、既知の14サブユニットには、電子供与体であるNAD(P)Hを認識し、酸化する機能を有するサブユニットが含まれておらず、おそらくは核ゲノムコードの未同定サブユニット群が存在すると考えられている。そこで本研究ではNDHの新規サブユニットを同定するため、ゲノム比較法を用いて、既知のNDHサブユニットと同じ系統プロファイル (phylogenetic profile) を示すシロイヌナズナのタンパク質遺伝子を37個選抜した。さらに、それらのうち機能未同定の10タンパク質についてT-DNA挿入変異株をABRCから取り寄せNDH活性を測定した結果、2ラインのNDH活性を消失した変異株を見出した。それらの変異株ではNDH複合体の蓄積量が顕著に減少しており、それら2つのタンパク質の欠損がNDH複合体の安定性を低下させることが明らかとなった。本発表ではそれら2つのタンパク質がNDHの新規サブユニットである可能性について議論する。