日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803におけるクロロフィルE環生成反応
南崎 啓*藤田 祐一
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p. 459

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抄録
クロロフィルは、4つのピロール環に加えて5番目の環状構造E環をもつ。E環生成を触媒するMg-プロトポルフィリンIXモノメチルエステル(MPE)シクラーゼには、構造的に全く異なる2種類の酵素が存在する。一つは、O2を基質とする好気的酵素AcsF、もう一つはH2Oを基質とする嫌気的酵素BchEである。植物はAcsFを、多くの光合成細菌はBchEを用いており、光合成生物は生育環境の酸素レベルに応じていずれかの酵素を用いていると考えられる。しかし、嫌気条件でも生育できるラン藻がいずれの酵素を用いるかについては不明である。Synechocystis sp. PCC 6803のゲノムには、2つのacsF類似ORFと3つのbchE類似ORFが存在する。本研究では、ラン藻のMPEシクラーゼ遺伝子を同定するため各ORFの欠損株を単離し、好気条件と嫌気条件における形質を検討した。その結果、2つのacsF類似ORF欠損株は、好気あるいは嫌気条件のいずれかにおいて中間体MPEを蓄積したが、3つのbchE類似ORF欠損株ではそのような中間体蓄積は検出されなかった。これらの結果から、Synechocystis sp. PCC6803のMPEシクラーゼは、bchE類似ORFではなく、2つのacsF類似ORFにコードされ、これらを生育環境の酸素レベルによって使い分けてE環を生成していることが示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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