抄録
バクテリオクロロフィルaの基本骨格バクテリオクロリン環は、2つのニトロゲナーゼ類似酵素、暗所作動型プロトクロロフィリド還元酵素(DPOR)とクロロフィリドa還元酵素(COR)の連続した反応によって形成される。DPORはL-蛋白質とNB-蛋白質、CORは X-蛋白質とYZ-蛋白質(各々ニトロゲナーゼのFe-蛋白質とMoFe-蛋白質に類似)とよばれる二つのコンポーネントから構成される。今回、紅色細菌Rhodobacter capsulatusにおける大量発現系を活用し、NB-蛋白質とYZ-蛋白質の生化学的解析を行った。精製したNB-蛋白質とYZ-蛋白質は、各々の基質プロトクロロフィリドとクロロフィリドを結合していた。このことは、NB-蛋白質とYZ-蛋白質は、各々DPORとCORにおける触媒コンポーネントであることを示している。これらの金属中心の同定を目指してEPR解析を行った。YZ-蛋白質からはg=2.04、1.94、1.92のシグナルが検出された。一方、NB-蛋白質はそのままではEPRサイレントであったが、ATPとL-蛋白質の存在下でg=1.94、1.92のシグナルを示した。これらの結果は、NB-蛋白質とYZ-蛋白質は、MoFe-蛋白質とは異なり比較的単純な [4Fe-4S]型クラスターをもつ点では共通しているが、それらのクラスターの性質は大きく異なることを示唆している。