抄録
RIM1遺伝子のTos17挿入による部分機能欠失型変異体は、イネ萎縮病ウイルス(RDV)に対して抵抗性を示すことから、この遺伝子はRDVの増殖をサポートする機能を有することが推定されている。RIM1遺伝子はNACドメインを持つ新規転写因子をコードすることが明らかにされているが、さらに機能解析を進めるため、RIM1遺伝子の複数の機能欠失型変異体を単離した。これらの変異体では根の伸長が抑制されており、その表現型がジャスモン酸(JA)存在下で生育させた野生型(WT)が示す表現型と類似していた。マイクロアレイ解析により変異体の遺伝子発現プロファイルとJA存在下で生育させたWTのプロファイルを比較したところ高い相関が見られた。これらの結果より、rim1変異体においては構成的にJAシグナルが活性化されていることが明らかになった。そこで、rim1変異体がJA過剰蓄積変異体であるのか、あるいはその下流のシグナル伝達変異体であるかを区別するために、内在のJA量を測定した。その結果、rim1変異体におけるJA量は野生型と同レベルであることが明らかになった。したがって、rim1変異体はJAシグナル伝達変異体であり、野生型RIM1はJAシグナルを負に制御する転写調節因子として機能していることが明らかになった。いくつかの植物ホルモンのシグナル伝達には転写調節因子のプロテアソームによる分解が関与していることが知られているが、RIM1が同様な制御を受けているのかを検討中である。