抄録
ウキクサ科Lemna属のL. gibba(長日性)とL. paucicostata(短日性)は光周性・概日時計機構の生理学的アプローチの好材料として半世紀以上前から利用されてきた。私たちはこれらの材料を用いた分子生物学的なアプローチを試みている。概日時計機構に関して、概日リズム発現プロモーター下にルシフェラーゼ遺伝子を持つコンストラクトをパーティクルボンバードメント法で一過的に導入することで生物発光リズムを観測できるレポーター系を確立した。さらに、アラビドプシスで知られている概日時計関連遺伝子(LHY/CCA1, PRRs, GI, ELF3)のウキクサホモログの機能解析のために過剰発現及びRNAi用のエフェクターコンストラクトをレポーターとともに同時に導入する、共発現系を開発した。この共発現系は植物の概日リズムの分子生物学的解析手法として非常に簡便なものであり、複数の導入遺伝子(コンストラクト)の組合せを自由に変えることが可能である。たとえば、異なる位相のリズム発現をするプロモーターに対するエフェクターの効果の違いや複数のエフェクターを導入することによる擬似多重変異の効果を容易に観測することができる。この共発現系を用いた解析からホモログとして単離したウキクサ時計関連遺伝子と対応するアラビドプシス遺伝子との間の機能の詳細な比較を試みており、その結果について報告する。