抄録
植物の液胞タンパク質は小胞輸送経路を介し、合成場所の粗面小胞体から蓄積場所の液胞へと運ばれる。この選別輸送機構には多数の因子が関与し、厳密に制御されていると考えられているが、詳細は不明である.最近、我々はGFP融合タンパク質を利用した「シロイヌナズナにおける種子貯蔵タンパク質の輸送変異体」の効率的な新規スクリーニング法を開発した。この方法により、これまでに3,000,000ラインから約100ラインの変異体候補の単離に成功している.得られた変異体はgfs (green fluorescent seed) 変異体と命名した。マップベースクローニング法により,GFS1は液胞選別輸送レセプターAtVSR1,GFS2はKAM2/GRV2であることが分かった.GFS9遺伝子は第3染色体上に、GFS10遺伝子は第4染色体上に存在していた。GFS9とGFS10のそれぞれのT-DNA挿入遺伝子破壊株を解析したところ、両変異体共に種子貯蔵タンパク質の輸送に異常が認められた.GFS2とGFS9の欠損変異体は、種子以外の器官についても異常がみられた.これまで,種子のタンパク質蓄積型液胞と栄養器官の分解型液胞の選別輸送機構は全く異なるとされてきたが,今回の結果は両者が共通の装置を使っていることを示すものである.GFS法は植物の液胞選別輸送に普遍的に関与する因子の同定にも有効であることも証明された.