抄録
[目的]2Sアルブミンなどの種子貯蔵タンパク質は粗面小胞体で合成され、小胞体内腔で凝集し、PAC小胞へ取り込まれた後に、タンパク質貯蔵型液胞へと輸送される。我々は以前の年会において、2Sアルブミンの一部とフォスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼからなる融合タンパク質を発現するシロイヌナズナがフォスフィノスリシン感受性を示すことを報告した。その後種子貯蔵タンパク質の輸送機構解明を目的として本形質転換体を変異原で処理し、フォスフィノスリシン耐性変異体を単離した。今回はそれらのうちの1つpav1(PAC vesicle defective 1)変異体について解析した結果を報告する。
[結果]pav1変異体は本葉が外側に巻く、貯蔵タンパク質(2Sアルブミンと12Sグロブリン)の一部が前駆体のままで種子に蓄積するなどの表現型を示す。電子顕微鏡観察の結果、種子細胞中に親株には見られない新規の構造体が認められた。この構造体内に存在する電子密度の高い部分は2Sアルブミン抗体で、周辺部は12Sグロブリン抗体で染色された。これらの結果から、pav1変異体の種子細胞内ではPAC小胞の形成不全に必須な遺伝子が変異したことによって種子貯蔵タンパク質の細胞内輸送が阻害されていると考えられた。原因遺伝子産物の機能についても考察する。