抄録
シロイヌナズナLeucine-rich repeat (LRR) Receptor-like Protein Kinase1, RPK1は,膜局在性の水分ストレス誘導性受容体型キナーゼである。我々はこれまでアンチセンス形質転換体および欠失変異体rpk1-1, rpk1-2のABAによる種子休眠,根の伸長抑制,気孔閉鎖等に対する表現型を解析し,これらの植物体がABA非感受性を示すことを明らかにした。RPK1が植物の様々なABA応答反応に関与し,重要なシグナル因子の一つとして機能することが考えられた。
RPK1高発現のシロイヌナズナに与える影響を解析する為に, CaMV35Sプロモーター制御下でRPK1を過剰発現する形質転換植物体を作製した。得られた植物体は弱い生育抑制を示し,またABAによる根の伸長抑制,気孔閉鎖等に対しABA高感受性を示した。また, RPK1過剰発現植物体は乾燥ストレスに対し耐性を示すことが明らかになった。さらに, RPK1欠失株rpk1-1およびRPK1過剰発現体では,活性酸素に対する応答性が変化しており, rpk1-1はH2O2による気孔閉鎖に対し非感受性を示した。RPK1は水分ストレスおよび活性酸素応答反応のクロストークに関わる因子であることが考えられた。本報告ではさらに, RPK1が関わる水分ストレスシグナル伝達経路の詳細について考察する。