日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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糸状性シアノバクテリア Nostoc punctiforme ATCC29133を用いた分化細胞ホルモゴニアの形成変異体の単離と解析
*富谷 朗子Duggan Paula S.Adams David G.
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p. 567

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抄録
シアノバクテリアは形態的多様性に富む分類群であり、その形態的特徴は分類学上の重要な基準となっている。特に糸状性シアノバクテリアは細胞が環境条件に応じて、栄養細胞、異質細胞(窒素固定に特化)、アキネート(休眠細胞として機能)、ホルモゴニアの4種類に分化するという、原核生物でありながら多細胞生物的な特徴を持つ。ホルモゴニアは物理環境の変化や共生宿主である植物の存在によって誘導され、糸状体を形成する細胞の急速かつ同調的な分裂によって形成される一時的な分化細胞である。ホルモゴニア分化時の糸状体は運動能力を持ち、分散や植物との共生に重要な役割を担っていると考えられている。このようにホルモゴニア形成は発生学的、生態学的、また進化学的に興味深い現象であるが、その形成の分子機構の詳細は不明である。
本研究ではホルモゴニア形成の分子機構を解明するため、糸状性シアノバクテリアのモデル生物 Nostoc punctiforme ATCC29133株のトランスポゾン変異体を作成し、ホルモゴニア形成の変異体の単離と解析を行った。その結果、宿主のコケ植物Blasia pusillaによってホルモゴニアが誘導されず、また共生コロニーも作らない変異体が単離された。
ホルモゴニア形成の分子機構の解明は、シアノバクテリアの形態的多様化や、植物との共生関係の成立の背景を考える上で重要な手がかりとなるだろう。
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© 2007 日本植物生理学会
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