抄録
高等植物のアクアポリンは大きなファミリーを形成している。水の輸送を担うタンパク質として発見されたアクアポリンは今では多様な低分子溶質も輸送することが続々と実証されてきている。植物組織内のある細胞での水や溶質の移動は、水ポテンシャルの変化を介して周辺の細胞の水輸送に影響すると考えられる。このことからアクアポリンファミリーのメンバーの発現調節は互いに密接に関連しあっていることが想定される。
我々はイネ発現データベース(RED)から発現データを、イネゲノムデータベースから遺伝子の上流域の配列を取得し、発現パターンの解析とプロモーター領域周辺の塩基配列の解析をおこなった。50 Mm NaClの比較的穏やかな塩ストレスを与えた一連の実験(Project ID2102 by Tanaka Yoshiki, 2001)の結果によると、塩ストレスが負荷された初期段階で、アクアポリンファミリーの多くのメンバーが根では0-1, 2-3, 4-5時間、葉では2-3時間の時間帯に同調的に減少し、根では5-6時間、葉では1-2時間には同調的に増加した。同調的発現に関わるようなプロモーター領域のモチーフ検索を進めている。