抄録
ホウレンソウのチラコイド膜を40℃で30分間熱処理すると、光化学系II の反応中心結合タンパク質D1が分解され、23 kDaのN末端断片が生じた。この分解はZnで促進されEDTAで阻害されたので、金属プロテアーゼの関与が考えられる。チラコイド膜を2M KSCNで処理すると熱処理によるD1分解が見られなくなるとともに、その上清に分子量約70kDaのプロテアーゼが可溶化されることが示された。また、この上清に存在するプロテアーゼがFtsHであることがFtsH抗体(anti DS9, anti VAR2)を用いたウエスタン解析によって確認された。チラコイド膜について行ったMALDI-TOFマス解析では、FtsH2とFtsH8が同定された。可溶化されたFtsHプロテアーゼとチラコイド膜を用いた再構成実験では、熱処理によるD1タンパク質の分解がプロテアーゼ画分の添加で促進された。以上の結果から、熱ストレス下でのD1タンパク質の分解にはFtsHプロテアーゼが関与していると考えられる。