日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

赤外分光法によるAcaryochloris marinaの光化学系IIにおける二量体クロロフィルの同定
*大久保 辰則野口 巧鞆 達也宮下 英明土屋 徹三室 守
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 619

詳細
抄録
シアノバクテリアAcaryochloris marinaは、主要色素としてChl dを持ち、また、微量成分としてChl aを含む。A. marinaの光化学系IIの二量体クロロフィル(P)が、Chl dより形成されているのか、それとも水分解能を保持するため、他の酸素発生型光合成生物と同様にChl aを用いているのかについては、多くの議論があり、最終的な結論は得られていなかった。本研究では、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて、A. marinaの光化学系IIにおけるPのクロロフィル種を同定した。A. marinaより精製した系IIコア複合体を用いてPの光酸化の際のFTIR差スペクトル(P+/P)を測定し、Synechocystis sp. PCC 6803及びホウレンソウのChl aよりなるP680の光誘起差スペクトル(P680+/P680)と比較した。その結果、A. marinaのP+/Pスペクトルにおけるクロリン環の振動領域には、Synechocystis及びホウレンソウのP680+/P680スペクトルとは明らかな違いが見られた。このことは、A. marinaのPがChl aではなく、Chl dより成ることを示している。また、A. marina のP+の二本のケトC=Oピークの特徴は、他の2つのものとほぼ同じであったことから、P+上の電荷分布には大きな違いがなく、A. marinaのPがChl dのホモダイマーであることが示唆された。
著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top