抄録
Lollらによる光化学系II(系II)複合体の結晶構造モデルにおいて(Nature 435 (2005) 1040-1044)、未知の低分子量膜貫通型タンパク質の存在が明らかとなった。我々は、好熱性ラン色細菌Thermosynechococcus elongatusから系II複合体を高純度に精製し、そのタンパク質の同定を試みた。その結果、Ycf12を新たに系II複合体の構成成分として確認することができた。他種のラン色細菌でも同様に系IIの構成成分となっているか、どのような機能を果たしているのかを検証するために、Synechocysitis sp. PCC 6803の当該遺伝子を欠失させた変異体を作成し、系IIの機能やタンパク質組成について野生株との比較分析を行った。
通常の培養条件では、増殖特性や細胞の酸素発生活性などについて、野生株と変異株で大きな違いは見られなかった。精製した系II複合体では、野生株に比べ変異株で酸素発生活性の低下が見られた。電気泳動の結果、一部の表在性タンパク質の結合量が減少していた。これらのタンパク質は、精製の段階で失われたと考えられる。Ycf12の欠損により、それらのタンパク質の反応中心複合体への結合が不安定になっていることが示唆された。Ycf12は、系II複合体の構造的安定性にも寄与していると考えられる。