日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光合成におけるジガラクトシルジアシルグリセロールの機能に関する研究
*桜井 勇水澤 直樹和田 元佐藤 直樹
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p. 623

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抄録
ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)は、チラコイド膜に含まれる主要な脂質成分の1つである。DGDGをはじめとするチラコイド膜脂質は、生体膜の基本構造である脂質二重層を形成するのみでなく、様々な超分子複合体の構成成分であることが、近年、明らかにされてきている。好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatusの光化学系II複合体(PSII)の結晶構造中には14分子の脂質分子が同定され、そのうち4分子がDGDGであることが報告されている。しかし、DGDGがPSIIにおいて果たしている、具体的な機能に関しては明らかにされていない。
ラン藻や単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeのゲノムを検索すると,高等植物型のDGDG合成酵素が見出されず,両者に共通する新規なDGDG合成酵素が存在するものと推定された。9種のラン藻とC. merolaeだけに存在すると推測されるタンパク質を、Gclust server(http://gclust.c.u-tokyo.ac.jp/)により検索すると、12クラスターに分類された。そのうち1つのクラスターには、糖転移酵素と推測されるタンパク質が含まれており、Synechocystis sp. PCC 6803では、Slr1508がそのクラスターに存在した。そこで、slr1508遺伝子を相同組み換えにより破壊したところ,DGDGの蓄積が見られなくなった。この変異株を用いた解析から、DGDGはPSIIに必要不可欠ではないが、その安定化に寄与していることが明らかとなった。
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© 2007 日本植物生理学会
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