日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネへの疑似C4光合成回路の付与
谷口 洋二郎大河 浩福田 琢哉増本 千都深山 浩*徳富(宮尾) 光恵
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p. 632

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抄録
C3植物葉肉細胞内で疑似C4光合成回路を駆動させるためには、3種類(PEPC, PPDK, NADP-ME)あるいは4種類(PEPC, PPDK, NADP-MDH, NADP-ME)のC4光合成酵素を高発現させる必要があると考えられている。異なる組合せのC4酵素を発現する形質転換イネ(二重形質転換イネ3種類、三重形質転換イネ1種類、四重形質転換イネ1種類)を作製し、生育特性、光合成特性、および、炭素同位体分離比を比較した。
PEPCを高発現させると光合成速度と炭素同位体分離比が低下する。4種類のC4酵素すべてを共発現させると、PEPCの高発現で一旦低下した光合成速度と炭素同位体分離比が回復した。この光合成速度の回復にはPPDKとMDHが必要であることがわかった。光合成速度は増大したものの、四重形質転換イネでは生育が阻害され、収量も低下した。この生育阻害はPEPCとMEの共発現に起因することが明らかにされた。
4種類のC4酵素のうち、PPDKとMDHは明所でのみ活性を示し暗所では不活性となるが、PEPCとMEは明所、暗所ともに活性を示す。PEPCとMEが共発現すると、暗所あるいは弱光下で一旦固定した炭素が何らかの経路を経て消費されるものと考えられる。イネのPEPCは夜リン酸化され高活性型となる。イネのこの特徴がPEPCとMEの共発現による生育阻害の一因と考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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