日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒャクニチソウ培養細胞を用いた維管束細胞分化機構の解析
*栗山 英夫斉藤 奈央子出村 拓福田 裕穂
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p. 703

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抄録
維管束細胞の分化における遺伝子発現の細胞特異性を効率的に解析した例はこれまでになかった。単離葉肉細胞から木部細胞や管状要素への分化を高頻度同調的に誘導できるヒャクニチソウ培養細胞系では管状要素細胞死がある種の有機物陰イオンの液胞への輸送を阻害する薬剤によって特異的に促進されることがわかっており、細胞死を起こした管状要素中に蓄積されていたmRNAは即分解される。我々はこれらのことを利用し、分化途中の生きている管状要素が多い培養段階で薬剤処理した培養液と対照の無処理の培養液から細胞を回収してmRNAを抽出し、約9,000のESTをもとにしたマイクロアレイで包括的な遺伝子発現解析を行った。
その結果、経時的な発現解析において培養系内で管状要素形態形成時に合わせて一過的な発現パターンを示す遺伝子群の中にも細胞レベルでの管状要素特異性の程度に相当なばらつきがあることがわかった。
これらの遺伝子のうちの発現パターン特性の異なるいくつかについてシロイヌナズナの相同遺伝子を推定し、そのプロモーター領域にレポータータンパク質をつないだコンストラクトを作製し形質転換植物を作出して観察したところ、培養系内での細胞特異的な発現パターンが維管束組織内での細胞特異的な発現パターンを反映していることを示唆する結果を得た。これらをもとに維管束細胞の分化機構、管状要素の細胞死/自己分解機構について考察する。
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© 2007 日本植物生理学会
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