抄録
シロイヌナズナのIQモチーフを持つタンパク質IQM1の遺伝子のT-DNA挿入破壊株をSalk T-DNA系統から2系統得て、その表現型を調べた。IQM1は488アミノ酸残基からなるタンパク質で、カルシウムイオンなしでカルモジュリンに結合するIQモチーフを持つ。その遺伝子は9個のエキソンから成るが、iqm1-1とiqm1-2ではT-DNAはそれぞれ第1エキソンと第6イントロンに挿入していて、RT-PCRによれば挿入部位より下流の配列は転写されていなかった。両方の破壊株で主根の成長が野生型より約30%低下していた。auxin-response factor (arf) 8-1 (Tian et al., 2004)は主根の成長は正常だが、二重突然変異体arf8-1 iqm1-2の主根の成長はiqm1-2より更に低下していた。RT-PCRによってIQM1の発現を調べたところIQM1の発現は光誘導性で、暗所ではARF8によって正に調節されていた。IQM1の一部はエンドウで単離されたストレス誘導性タンパク質に似ていたので(Savenstrand & Strid, 2004)、乾燥や塩の効果を調べたところ、これらのストレスによっても発現が誘導された。以上の結果から、IQM1はカルモジュリンとさまざまな環境要因のシグナルを統合する因子である可能性が示唆された。