抄録
暗所で生育したトウモロコシ芽生えは光照射により中胚軸の伸長成長が強く阻害される。以前の研究で、短時間の光照射が中胚軸の水分量と還元型グルタチオン(GSH)濃度を10~40%減少させることから、細胞の吸水力低下及びGSH消費が光成長阻害の原因であることが示唆された。本研究では光成長阻害における水分量とGSHの役割を明らかにするために、中胚軸の成長とGSH濃度に対する湿度条件とGSH合成阻害剤(BSO)の影響を調べた。まず、密封した湿度100%の容器の中で200 μM BSOを含む0.8%寒天上で植物体を4日間育て、中胚軸の成長とGSH 濃度を測定した。その結果、コントロール(-BSO)に較べ、成長は25-33%、GSH濃度は37-45%低下していた。それらの植物体に光を照射したところ、-BSO、+ BSO処理の両方で、光による成長阻害とGSH減少は見られなかった。つまり高湿度条件下では光成長阻害が起こり難いことがわかった。これらから、光成長阻害は水分条件に依存して生じること、また、GSHの減少はその直接の原因ではなく光による水分低下やダメージを補償する変化であることが示唆された。