抄録
Dof転写因子は植物特異的な転写因子であり、様々な植物種において生長や発達、ホルモン応答、環境シグナルへの応答に関与していることが報告されている1,2。シロイヌナズナには36個のDof遺伝子が存在するが、そのうちの限られた遺伝子についてのみ解析結果が報告されており、大半は未解析のままである。本発表では、シロイヌナズナの未解析Dof遺伝子の発現解析と機能解析を行い、このDof遺伝子が維管束形成に関わっている可能性が示唆されたので報告する。まず、このDof遺伝子のプロモーターの下流にGUSを融合させた遺伝子を導入した形質転換植物を解析したところ、胚、葉原基、根端などにおいて、維管束の前駆細胞でのみGUSの発現が見られた。次に、このDof遺伝子の生理的役割を明らかにするために、過剰発現体を複数系統、作成して解析を行なったところ、過剰発現体では子葉、本葉の維管束のパターンに異常が見られ、発現量が多い系統では葉がカールするという表現型も観察された。過剰発現植物では、HD-Zip III型転写因子のmRNAレベルには野生型との違いは見られなかったが、サイトカイニン応答性遺伝子のmRNAレベルの減少が見られた。現在、さらに詳細な解析を行なっており、それについても合わせて報告する予定である。
1. Yanagisawa S (2002) Trends Plant Sci 7:555-560, 2. Yanagisawa S (2004) Plant Cell Physiol 45:386-391