抄録
トマト栽培においては、様々な環境ストレスにより生育障害や収量低下が発生する。また、高糖度トマト生産には、乾燥や塩ストレス環境下での栽培が必要であり、高品質になるほど収量低下が問題となる。一方、アブシジン酸(ABA)は様々なストレス応答に関与するホルモンであることが知られている。そこで、本研究ではABA内生量調節の主要な役割を担っている代謝酵素のABA8’位水酸化酵素(CYP707Aサブファミリー)と生合成酵素の9-cis-epoxycarotenoid dioxygenase(NCED) 遺伝子のトマト(Lycopersicon esculentum cv. Ailsa Claig)からの単離と発現解析を行い、ABA内生量制御機構の解析を試みた。
トマトから4種類のABA8’位水酸化酵素遺伝子(LeABA8’h1-4)と2種類のNCED遺伝子(LeNCED1-2)を単離し、ストレス応答時の発現解析を行った。乾燥ストレス処理により、LeNCED1、LeABA8’h1、LeABA8’h2の発現量は増加し、ストレス解除により、LeNCED1の発現量は減少し、LeABA8’h1 、LeABA8’h2の発現量は10倍以上に増加した。これらのことから、トマトの水ストレス応答時のABA内生量調節には、LeNCED1、LeABA8’h1、LeABA8’h2が主に関与していることが示唆された。現在これらの遺伝子を制御した形質転換トマトの作出を試みている。