抄録
近年RNAiで知られるsiRNAが、DNAメチル化やヒストン修飾を誘導しクロマチンの不活化を引き起こすことが示唆されている。また、シロイヌナズナやイネにおいて内在性siRNAのクローニングが行なわれ、内在性siRNAの種類の豊富さが浮き彫りとなった。そのため、siRNAのシグナルがゲノムの幅広い領域に届き得ることが考えられるが、全てのsiRNAがそれぞれターゲットとなるクロマチンに対して機能するのかは分からない。そこで本研究では、任意のゲノム配列と相同性を持つsiRNAをイネに高蓄積させ、そのsiRNAがクロマチンの不活化を引き起こすことができるのかどうかを解析した。任意のゲノム配列にはプロモーター配列を選択した。これまでに、8つの遺伝子をそれぞれターゲットにした形質転換イネを作出し、ターゲットプロモーター領域のDNAメチル化とヒストン修飾の変動を解析した。また、クロマチンの不活化の指標として、ターゲット遺伝子の発現抑制の程度を解析した。それらの結果から、下記の3つを示唆および考察したので、本年会で議論したい。1) siRNAが引き起こすクロマチンの不活化には、DNAメチル化およびヒストン修飾が重要である。2) siRNAはどのようなゲノムに対してもヒストン修飾を誘導するわけではない。3) siRNAはどのようなゲノムに対してもクロマチンの不活化を引き起こすわけではない。その要因のひとつに、ヒストン修飾を誘導できるかどうかという点が考えられる。