抄録
液胞は植物、酵母、カビなどにおける様々な代謝物のコンパートメントとして知られている。我々は出芽酵母液胞で塩基性アミノ酸輸送に関わるVBA遺伝子ファミリーの存在を明らかにしている。本研究では分裂酵母における液胞アミノ酸輸送に関わる遺伝子を検討した。分裂酵母細胞による糖(2−デオキシグルコース)とアミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン)取り込みに対する液胞H+‐ATPase阻害剤コンカナマイシンの影響を調べた。糖取り込みは影響されず、アミノ酸取り込みが約60%阻害が見られ、細胞のアミノ酸取り込みには液胞が主要な働きをしていることがわかった。出芽酵母VBAに近縁の分裂酵母遺伝子、fnx1に加えてfnx2を新たに見出した。これらはいずれも14回の膜貫通部分を有するトランスポーター遺伝子と推定される。Fnx1pとFnx2pのGFP融合遺伝子産物はいずれも液胞膜に局在することを確認した。Δfnx1変異株では親株と比較してリジン、イソロイシン、アスパラギンの取り込み活性が低下し、Δfnx2変異株ではリジン、イソロイシンの取り込み活性が低下していた。以上の結果は、fnx1、fnx2が分裂酵母液胞において、比較的基質特異性の広いアミノ酸トランスポーターであることを示している。