抄録
Positron Emitting Tracer Imaging System (PETIS)は、植物に投与したポジトロン放出トレーサーの動態を動画像として撮像できる装置である。さらに短半減期核種のトレーサーを投与することで同一個体を用いた撮像を繰り返すことも可能となり、同一植物体における環境変化に応じた元素動態の変化を捉えることができる。
本研究ではPETISおよびポジトロン放出トレーサー11CO2(半減期20.39分)を用い、カドミウムが植物の炭素転流に及ぼす影響について解析した。実験には播種後4週間目のイネを用い、最大展開葉に11CO2を投与した後の11C-同化産物の動態を撮像した。得られた動画像データに対して、11C-同化産物が同化葉から葉鞘基部へと到達する時間を決定するプログラムを開発し、転流速度を解析した。本手法を用いて、カドミウムを経根吸収させたイネの11C-同化産物の転流速度を計測したところ、通常条件下におけるイネの転流速度と比較して有意に低下する結果が得られた。