抄録
現在、地球規模で進行するオゾン層の破壊により地表に届く紫外線(UV)照射量の増加と農作物への影響が危惧されている。UVが与える植物への影響は、遺伝子の損傷、光合成の阻害、活性酸素種の生成など様々であり、短波長のUVは、特に有害である。最近、我々の研究グループがオゾン感受性タバコとオゾン耐性タバコを用いて提唱したオゾン応答性細胞死モデルでは、一重項酸素(1O2)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(HO•)等のオゾン誘導性の活性酸素種によるダメージとそれに応答したカルシウム情報伝達系の活性化が2次的に誘導するオキシダティブバーストを介して起きるとされる。本研究では、オゾン誘導性細胞死とのアナロジーにより、オゾン感受性の異なる2系統のタバコ培養細胞を用いて、UV-C(波長、254 nm)に応答した細胞死誘導メカニズムの解析を試みた。その結果、両系統間でのUV-C誘導による細胞死に差が生じることがわかった。また活性酸素種除去剤の効果からUV-C誘導細胞死におけるH2O2、HO•、1O2、スーパーオキシド(O2•-)の関与が認められ、キレーター等の効果からFe2+やCu+が触媒するFenton反応の関与による細胞死促進の可能性が示された。またカルシウムキレーターによるUV-C誘導性細胞死が阻害されたことから細胞内カルシウムに対するUV照射の効果を解析した。