抄録
シキザキベゴニア(Begonia semperflorens)における光環境適応機構を調べることを目的に、明期16時間、暗期8時間の24℃の培養室で弱光(50μmol photon m-2 s-1, LL)あるいは強光(50μmol photon m-2 s-1, HL)下で生育させ、その光合成機能と色素組成の違いを調べた。クロロフィル蛍光の測定結果は、電子伝達活性および非光化学的クエンチングはLLの方が高いことを示した。葉緑体色素組成については、HLにおいてキサントフィルサイクル色素の増加が認められたが、Chla/Chlb比がLLで約0.6、HLでも約1.2という著しく低い値を示した。そこで、葉緑体チラコイドを調製し、その色素-タンパク質複合体を非変性ゲル電気泳動で分析したところ、光化学系I複合体のバンドがほとんど検出されなかった。チラコイドタンパク質をSDS-PAGEで分析しても、光化学系I反応中心PsaAのバンドは確認できなかったが、ウエスタンブロット解析により、光化学系Iの集光性色素-タンパク質LHCIがわずかに検出された。 一方、光化学系IIを構成するタンパク質については、他の植物と比較し得る量が存在することが認められ、シキザキベゴニアにおいては光化学系I/光化学系II比が非常に低い可能性が示唆された。