抄録
【目的】Cdの高レベル蓄積は,数種の野生植物においてのみ実証されている稀少かつ特異な現象である。この現象に介在するメカニズムは,未だ不明な点が多い。これまでに我々は,緑肥作物の中からCdの蓄積性と耐性に優れたイネ科のエンバクAvena strigosaを発見した。本報では,エンバクにおけるCdの吸収・解毒に関与する要因について検討した。
【方法】Avena strigosa 2品種とA. sativa 1品種を用いた。人工気象室で水耕栽培した実生をCdに処理した(0-100μM)。植物体内の総元素濃度および細胞壁画分の元素濃度をICP-MSにより測定し,葉部の脂質過酸化レベル,抗酸化酵素活性,金属結合性ペプチドであるファイトケラチンを常法に従って測定した。異なるCa条件下でCd曝露し,Ca処理がCdの蓄積と耐性に与える影響を解析した。
【結果】A. strigosaの1品種において,イネ,ソルガムなどのイネ科作物,および供試した他のエンバクよりも優れたCd蓄積性と耐性が認められた。この品種では,高濃度のCd処理区においても葉部のCdの約80%が細胞壁に保持されており,他のエンバク品種よりも細胞壁へのCd蓄積能が高いことが示唆された。一方,ファイトケラチンの誘導能には優位性が認められなかったことから,液胞へのCdの隔離には,異なる機作が介在している可能性が示唆された。現在Ca2+の液胞膜輸送体CAX1をA. strigosaより単離し,発現解析を行なっている。