抄録
植物自身が持つ防御システムを活性化して病害を防除する薬剤である非殺菌性病害防除剤(plant activator;植物活力剤)が注目されている。plant activatorはこれまでのような殺菌性の薬剤と異なり、植物の防御システムを活性化することで病害防除を行うため、候補化合物の選抜および評価が困難である。そこで、植物の免疫機構を利用した、plant activatorのハイスループットスクリーニングシステムの開発を試みた。モデル植物シロイヌナズナにおいて感染応答や病害耐性に関わる遺伝子のプロモーターを取得した。これら遺伝子をレポーター遺伝子と融合して植物に導入し、植物の防御システムをセンサーとして利用したレポータージーン・アッセイ系による一次スクリーニング系を構築した。次いで、独自に作製した1.2Kシロイヌナズナ・マイクロアレイを用いた薬剤効果の評価系、病原菌の感染実験による二次スクリーニング系からなるplant activatorのリード化合物および候補化合物のハイスループットスクリーニングシステムを開発した。さらに、ハクサイ・マイクロアレイを作製し、ハクサイでの評価系構築を試みている。本発表では、スクリーニング系の紹介とplant activatorの開発の現状と展望について報告する。