抄録
ダイズ黒根腐病は世界中で見られる病害で、発病したダイズは根が黒くなり葉が黄化して枯死する。近年、ダイズ作が水田転換畑で行われるようになってから被害が広がってきている。原因糸状菌Cylindrocladium parasiticumは土壌で腐生生活を営む条件的寄生菌で駆除が難しい。これまでに栽培での防除が試みられてきたがまだ十分な対策はない。また抵抗性品種の育種も試みられているが今のところ安定して抵抗性を示す品種もない。黒根腐病菌は日本中のどの畑でも普通に見られる。ところが通常、発病して枯死まで至る株は一部だけであって毎年大被害になるわけではない。また黒根腐病菌は播種後1ヶ月足らずの期間でほぼ全てのダイズに感染するのに、その発病の時期は播種後2ヶ月以降である。このことからダイズには本来黒根腐病に対して抵抗する能力があると考えられた。そこで本研究では黒根腐病菌の感染様式とそれに対するダイズの防御組織を観察した。その結果、菌の侵入に伴ってダイズの根系に周皮組織が形成されること、周皮が基本的には十分に機能して菌の侵入を阻止することがわかった。発病した株を観察した結果から、黒根腐病が成立する条件について考察する。