抄録
シロイヌナズナを始めとする様々な植物のゲノム情報の整備が進んできた今日では、異種植物間の遺伝子発現量の進化的保存性を明らかにすることは植物の遺伝情報の多様性解明の一環である。本研究では、その第一段階として、葉と根におけるシロイヌナズナとトマトのAffymetrix GeneChip発現データの比較を行った。シロイヌナズナ全タンパク質とトマトUNIGENE(~40,000)の配列に基づいて推定した4,274個のオーソログペア間の遺伝子発現強度に葉で0.52-0.54、根で0.51-0.57の統計学的に有意な正の相関が認められたことは遺伝子発現量の進化的保存を意味する。進化的保存の程度と遺伝子機能の関係を明らかにするため、Gene Ontology分類毎の遺伝子発現パターンを調べたところ、”electron transport or energy pathways”などの遺伝子群では発現量が高度に保存されていること、”cellular component unknown”などの遺伝子群は発現量の保存性が低いことがわかった。同様に代謝経路毎の遺伝子発現パターンを解析したところ、”Glycolysis/gluconeogenesis”などの代謝経路で発現量が高度に保存されていること、”Sterol biosynthesis”の遺伝子群はトマトで強い発現を示す傾向にあることが明らかとなった。これらの結果はシロイヌナズナとトマトの遺伝子発現量の進化的変化には遺伝子機能に依存したバイアスが存在することを示唆する。