日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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成長計測で難問に挑む--雑種強勢とクロマチン修飾
*土生 芳樹
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p. S005

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抄録
異種間または遠縁系統間の交配によるF1個体はしばしば親個体よりも量的・質的に優れた形質を示す。この現象は雑種強勢(ヘテロシス)と呼ばれ、農作物の育種手法として広く使われているが、農業形質以外の基本的な生長パラメータの精密な時系列解析はほとんど行われていない。一方で、種間雑種や遠縁間交配において、遺伝子発現の変化・不安定性などのエピジェネティックな現象が起こる例が報告されている。本発表では、このようなゲノム間相互作用やエピジェネティック変化のような多面的・複合的な影響を含む現象に対する時系列解析の試みとして、イネ遠縁間交配系統(ジャポニカxインディカ)を用いた、クロマチン修飾変化が初期生育における生長パラメータに及ぼす影響の解析を紹介する。ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤(TSA)で処理した植物体では、初期生育に全体的な生長遅延や生長阻害が観察される。しかし、TSA処理したF1個体の初期生長を経時的に計測し、回帰計算により求めた生長パラメータを無処理F1および親系統の生長パラメータと比較した結果、幾つかのパラメータでTSAに対してF1特異的な反応が見られ、F1の生長が親系統とは異なるクロマチン修飾依存性を持つ可能性が示された。
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© 2007 日本植物生理学会
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