抄録
植物の細胞質分裂装置であるフラグモプラストは主に微小管からなる構造体で、膜小胞を輸送することにより細胞板の形成に働く。細胞中央部に形成されたフラグモプラストが細胞板を形成しながら細胞表面に向かって広がることにより細胞質分裂は進行する。細胞質分裂の進行には新しい微小管がフラグモプラストの外縁に付加されることが必要なため、フラグモプラスト外縁の微小管の挙動を解析できれば細胞質分裂進行の分子機構が明らかになると考えられる。しかし、生きている植物細胞の深部で微小管を高分解能で観察することが難しいため、フラグモプラスト外縁の微小管の挙動はこれまで不明であった。我々は、微小管全長を標識するGFP-α-チューブリン、微小管プラス端を標識するGFP-EB1を発現させたタバコBY-2細胞を用い、ニポウ式共焦点ユニットに冷却CCDカメラを組み合わせたシステムでフラグモプラスト外縁の微小管の観察に成功した。微小管が付加される過程は、1)既存のフラグモプラスト微小管上での新しい微小管の伸長開始、2)赤道面をはさんで反対側で伸長開始した微小管との架橋、3)互いに架橋した微小管のフラグモプラスト外縁への付加、からなることがわかった。微小管の伸長開始過程には微小管への細胞質γチューブリンの結合(Murata et al.2005, Nature Cell Biology)が働いていることが予想されるため、現在γチューブリンの役割の解析を進めている。