抄録
1個の転写因子bZIPと1個のLOVドメインを持ち,FMNを結合する青色光受容体をフシナシミドロ(Vaucheria frigida)で発見した(2005植物生理学会 新潟).多く発現している2種のホモログの構造と機能を解析したところ,少なくともそのうち1種はFMNを結合し,特定のDNA 配列TGACGTに結合する転写因子であることがわかった(深松ら,本学会).RNAiを用いて両タンパクの発現をノックアウトすると,光細胞形態形成反応の1種である青色光依存分枝誘導(Kataoka 1975)が阻害された.これらは生殖器官の発達にも関与している.BLAST検索により, 2004年に公開された海産中心目ケイ藻Thalassiosira pseudonana のゲノム中にこのbZIP-LOVタンパクの配列が数個みつかった.そこで,近縁の褐藻ヒバマタ(Fucus)受精卵のmRNAにホモログを探索したところ数個のホモログがみつかった(石川ら,本学会).フシナシミドロ,褐藻,ケイ藻,卵菌類は黄色植物(Stramenopile, Heterokont)に含まれるので,私たちはこの新奇青色光受容体をAUREOCHROME (AURE0)と名づけた.AUREOは緑色植物や菌類にはみつからず,逆に黄色植物にはフォトトロピンはみつからない. AUREOは黄色植物の形態形成を担う共通の青色光受容体かも知れない.