抄録
植物は根圏環境の低リン状態に対して様々な戦略をもって適応していることが知られている。本研究は、イネ科、アブラナ科、マメ科といった低リン適応にそれぞれ特色のある科のモデル植物であるイネ、シロイヌナズナ、ミヤコグサを用いて、低リン適応戦略を解析することを目的とした。幼植物時に水耕栽培において低リン処理した場合の植物の代謝変動を、リン充足条件で栽培した植物と比較により解析した。トランスクリプトーム解析を地上部と根部に対して行ない、その結果を基に可能な限りKappa-Viewによるパスウェイ解析を行った。さらにリン代謝において重要と判断されたいくつかの遺伝子に関してはReal time PCRによる発現量解析を行い、培養液および体内のリンレベルに対しての変動を調べた。3種の植物に概ね共通して、酸性ホスファターゼやヌクレアーゼ、解糖系、デンプン合成系の遺伝子などが、地上部、根部ともにリン欠乏で発現が増加した。炭素代謝においては、TCAサイクルやグリオキシル酸回路などでのリン欠乏応答の違いが植物間で顕著であった。また、種間でのリン欠乏による遺伝子発現応答の違いは、二次代謝産物関連遺伝子において最も顕著だった。特にフラボノイド代謝系においてそれぞれの植物種で特徴的な傾向が判断されたことから、本発表ではLC-MS/MSを用いたいくつかのフラボノイドの定量解析結果も報告する。