抄録
カルシウム結合タンパク質CBLとその標的分子であるタンパク質リン酸化酵素CIPKは、高等植物のカルシウムを介したシグナル伝達において重要な役割を担うと考えられている。シロイヌナズナゲノム上には10のCBLと25のCIPK遺伝子がコードされており、様々な細胞内シグナル伝達系が、特異的なCBL/CIPKの組み合わせによって調節されるというモデルが想定されている。今回我々は新たに、CBL1/CIPK1の組み合わせが光応答に関与していることを見出した。
赤色および青色光下において、シロイヌナズナcbl1/cipk1二重欠損株の芽生えは、野生株に比べて短い胚軸、すなわち光高感受性を示した。一方で、赤・青色光による光応答性遺伝子CHS, CAB3の発現誘導量は、cbl1/cipk1二重欠損株において低下していた。これによく似た表現型が、フィトクロムおよびクリプトクロム系光シグナル伝達の調節に関わる遺伝子HRB1の欠損株について報告されている。そこでこのHRB1に注目してBiFC解析を行ったところ、CIPK1とHRB1のタンパク質間相互作用が示された。CBL1/CIPK1はHRB1を介して光シグナル伝達に関与している可能性が考えられる。また本発表では、cbl1/cipk1二重欠損株が短日条件における早咲き表現型を示したことも併せて報告し、光応答におけるCBL1/CIPK1の機能について考察する。