抄録
高等植物には光化学系II(PSII)酸素発生系タンパク質(OEC)であるPsbPに加えて、PsbPドメインを持つ機能未知のパラログが複数存在している。特に我々がPsbP-like(PPL)と呼ぶ2つのタンパク質(PPL1、PPL2)は、その配列からシアノバクテリアのPsbPホモログ(cyanoP)により近い原核型のパラログであり、cyanoPが光合成の進化の過程でPsbPやPPLを含む多様なPsbPドメインタンパク質となり、様々な生理機能を担っている可能性を示唆していた。そこで本研究では、PsbPドメイン機能の多様性と重要性を明らかにするべく、シロイヌナズナppl1及びppl2変異株を用いてPPL1およびPPL2の生理機能の解明を試みた。その結果、PPL1はPSIIの構成的なサブユニットではないものの、強光時におけるPSIIサイクルの修復段階に関与していること、またPPL2は循環的電子伝達のうち、乾燥・低温・高温といった環境ストレスでの役割が示唆されている経路を担うNAD(P)H dehydrogenase (NDH) 複合体の活性および蓄積に必須の因子であることを明らかにした(Ishihara et al. Plant physiol. 2007)。これらの結果から、PsbPパラログがPSIIに限らない広範なチラコイド膜機能に関わっていることが示された。