日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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代謝物質動態情報の抽出 -環境応答解析へのNMR利用―
*岡本 真美平山 隆志菊地 淳
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p. 0132

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抄録
植物の外部環境の刺激に対する代謝物レベルの応答は、恒常性維持のための細胞レベルさらに個体レベルの代謝物バランス変動と捉えることができる。その応答を解析するには、経時的に変動する代謝物バランスを簡便に記述する方法や、化学反応の方向を詳細に記述する動的な解析手段が必要である。そこで我々は、外部刺激のコントロールが容易な培養細胞系を用い、物質動態情報を抽出する方法論を構築する事とした。まず、モデル系としてシロイヌナズナT87培養細胞を用い、種々の化学刺激で誘導される代謝物の1H-NMR解析から、刺激応答に即した代謝変動を簡便に抽出できた。さらに、T87培養細胞を13C安定同位体標識し、1H-13C HSQC、HCCH-TOCSY、HCACO等の測定法を駆使することで遊離の低分子主要代謝物を同定し、13C-13Cカップリング等に基づいた、代謝フラックス解析の基盤となる動態情報の抽出を行った。本会では、新たに不溶性の高分子代謝物も解析対象とし、蓄積された高分子物質と遊離物質との比較も議論する。これは植物の外部刺激の応答による代謝物バランス変動が、高分子バイオマスの蓄積などの表現型として表れることを理解しようとするものである。食糧やエネルギー源である植物の生産性を向上させる代謝工学の実現には、この表現型に至る物質動態を記述する方法論構築が不可欠であり、その展望についても議論したい。
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© 2008 日本植物生理学会
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