日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ホウ酸チャネルNIP5;1の発現増強によるシロイヌナズナのホウ素欠乏耐性能の付与
加藤 諭一高野 順平和田 素子三輪 京子*藤原 徹
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p. 0159

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抄録
ホウ素は高等植物の微量必須元素のひとつであり、ホウ素欠乏症は作物の収量や品質を低下させる農業上の問題のひとつである。導管輸送に働くホウ酸トランスポーターBOR1を過剰発現するシロイヌナズナは、ホウ素欠乏条件において稔実性が改善する (Miwa et al, 2006)。本研究では根においてホウ素の効率的な吸収に働くホウ酸チャネルNIP5;1の発現増強によって、BOR1過剰発現株のホウ素欠乏条件での更なる生育改善を目指した。
35Sプロモーター制御下でNIP5;1を過剰発現する形質転換株ではホウ素欠乏条件で生育の改善がみられなかったが、NIP5;1アクチベーションタグラインのうち一つでホウ素欠乏条件における根の伸長改善が観察された。このアクチベーションタグラインのT-DNAとほぼ同じ位置に35SプロモーターをもつコンストラクトをBOR1過剰発現株に導入した結果、ホウ素欠乏条件のプレート上でBOR1過剰発現株と比較して根の伸長が改善される複数の独立な形質転換植物を得た。そのうちの一つの系統ではBOR1過剰発現株と比較して、長期間育てたときのホウ素の蓄積や短期間でのホウ素の吸収量が増加し、稔実性が改善していた。本研究は、必須栄養元素のチャネルを用いた栄養欠乏条件下での植物の生育改善の可能性を示すものであると考えている。
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© 2008 日本植物生理学会
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