抄録
高等植物の頂端分裂組織は、未分化状態を保ちながら分裂・増殖する細胞群であり、上下軸方向への成長や器官原基の形成に必要な細胞を提供するという重要な役割を担っている。シロイヌナズナにおける分子遺伝学的解析から、地上部の分裂組織である茎頂分裂組織の領域決定には、細胞外ドメインにleucine rich repeat(LRR)をもつ受容体CLAVATA1(CLV1)/CLV2が、分泌性のリガンドであるCLV3を認識する細胞間情報伝達系が重要であると考えられている。CLV3はシロイヌナズナで32遺伝子報告されているCLV3/ESR (CLE)ファミリーの一員であり、C末に保存されたCLEドメインの12アミノ酸配列を機能単位とすることが当研究室で明らかにされた(Ito et al. 2006; Kondo et al.2006)。
CLV3の機能単位である12アミノ酸の化学合成ペプチド(CLV3ペプチド)は、野生型植物体の茎頂分裂組織と根端分裂組織の縮小をもたらすことから、CLV3遺伝子の過剰発現と同等の効果を持つことが予想される。一方、clv1、clv2突然変異体は、CLV3ペプチドによる茎頂分裂組織の縮小効果に耐性を示し、地上部でCLV1とCLV2がCLV3を受容しているというこれまでの知見を強く支持する結果となった。今回は、サプレッサースクリーニングによりCLV3ペプチドに耐性を示す新規の突然変異体を単離し、その表現型について詳細な解析を行った結果について報告する。