抄録
シロイヌナズナにおいて、青色光受容体フォトトロピンは光屈性, 葉緑体定位運動, 葉の展開, 気孔の開口等の生理反応を誘導する。フォトトロピンは青色光に依存して顕著な自己リン酸化を示すが、シロイヌナズナのフォトトロピンの自己リン酸化部位は全く同定されておらず、自己リン酸化の生理学的意味も不明であった。本研究では、質量分析等によりシロイヌナズナphot1の生体内の自己リン酸化部位を8箇所同定した。同定したリン酸化部位は、これまでにムギのphot1で明らかにされていたN末端領域とHinge1領域以外に、キナーゼドメインとC末端領域でも見つかった。これらの部位のリン酸化の機能を明らかにするため、リン酸化されるSerとThrをAlaに置換したphot1をphot1phot2二重変異株に導入し、変異phot1がフォトトロピンの生理応答を誘導できるかどうか調べた。8箇所のリン酸化部位の中で、キナーゼドメインのアクティべーションループに位置する851番目のSerのリン酸化のみが生理応答の誘導に必要であった。このSerは、青色光に依存して速やかに自己リン酸化され、暗黒下で脱リン酸化された。以上の結果は、青色光に依存したphot1の自己リン酸化が下流への情報伝達に必須であることを示している。