抄録
フォトトロピン(Phot)は植物において光屈性、葉緑体定位運動、気孔開口などを制御する重要な青色光受容体である。N末端側に光受容ドメインとして、FMNを結合した2つのLOVドメイン(LOV1、LOV2)があり、リンカー領域を介してC末端側にSer/Thrキナーゼドメイン(KD)をもつ。LOVドメインは光を受容すると保存されたCys残基とFMNの間で共有結合が形成し、暗所でもとに戻るフォトサイクルを示す。キナーゼ活性は暗状態で主にLOV2ドメインによって抑制されている。青色光照射でこの抑制がなくなりキナーゼは活性化され、フォトトロピンの自己リン酸化と他の分子をリン酸化することで、青色光シグナルを下流に伝える。しかし、LOV2ドメインによるキナーゼ活性調節機構について詳細はわかっていない。
シロイヌナズナのPhot1のLOV2-KDペプチドを大腸菌でGST融合タンパク質として発現、精製した。LOV2-KDはLOV2ドメインのみの場合と同様のフォトサイクルを示した(暗回復 t1/2 = 29s)。プロテオリシス解析とマス解析によりLOV2-KDでは光依存的構造変化がリンカー領域で起きていた。このような構造変化はQ575L変異導入ペプチドではみられなかった。さらに、LOV2-KDは大腸菌で発現させたPhot1のN末端側領域のペプチドをリン酸化した。LOV2ドメインに変異導入したペプチドのキナーゼ活性の結果も報告する。Phot1における光依存的な構造変化とキナーゼ活性調節機構について議論する予定である。