抄録
核にコードされた葉緑体関連遺伝子(Lhcb、RbcSなど)の発現は、葉緑体の機能・分化状態に応じて協調的に調節されることが知られている。この協調的遺伝子発現制御には、葉緑体から核に伝達される「プラスチドシグナル伝達系」が関わっている。このシグナル伝達に異常を示すgun突然変異体の解析から、葉緑体で合成されるテトラピロール中間体(MgProtoIX)がシグナル因子の一つであると提唱されているが、その調節・認識機構は明らかになっていない。既報では、MgProtoIX蓄積量はプラスチドが光酸化を受けるとコントロールに比べ10数倍上昇すると報告されているが、我々の結果では1/100に低下することが分かった。しかし、MgProtoIXは蓄積しないにもかかわらず、MgProtoIXを含む中間体の合成能は数倍亢進している事が分かった。すなわち、光酸化を受けた植物では、中間体は活発に合成されても蓄積せず、直ちに代謝・分解されていると考えられる。本発表では、MgProtoIXなど中間体の分解とプラスチドシグナルの関係について考察するとともに、gun1およびMg-chelatase サブユニット変異体(gun4、gun5)における中間体合成能の比較を報告する。また、新規突然変異体の単離・解析を進めており、本発表でその一部を紹介したい。