抄録
地球上に存在する広大な酸性硫酸塩土壌地域の再生および有効利用のためには窒素栄養の獲得において有利なマメ科植物の活用が重要であると考えられる.本研究では,ダイズの機能発現cDNAライブラリーの選抜による耐酸性遺伝子の単離と機能解析について報告する.
ダイズ幼植物由来のcDNAライブラリーをpDEST14ベクターに導入して大腸菌に組み込み,pH 4またはpH 5の酸性LB培地上で生育するクローンを選抜した。耐酸性クローンのプラスミドを回収して塩基配列を解析し,ダイズにおけるこれらの遺伝子の発現をRT-PCRで確認した。また,インサートを植物発現用ベクターpGWB2に導入し花序浸潤法を用いてシロイヌナズナを形質転換した。T2 植物および野生型植物を各種条件の1/6 MS培地で栽培し生育を比較した.
大腸菌25万クローンより27のユニークな耐酸性クローンを確認した.これらに対応する遺伝子には,ダイズ幼植物において構成的に発現するものとアルミニウムストレスによって誘導されるものがあった.完全長ORFを含む6クローンをシロイヌナズナで発現させたところ,いずれの場合も酸性およびアルミニウムイオンストレス条件下での生育が野生型に比べて有意に改善された.