抄録
イネの低温下における発芽性は、寒冷地における直播適性確保のために重要な形質である。イネの低温発芽性に関与する因子を単離するため、2組の低温発芽性に優れるヨーロッパ産品種と日本産品種、「Dunghanshali」×「かけはし」、「Arroz da terra」×「いわてっこ」を掛け合わせた組み替え近交系(RILs)を作り低温発芽性との連鎖を調べた。「Dunghanshali」由来として3ヶ所、「Arroz da terra」由来として4ヶ所、日本産品種由来として1ヶ所の低温発芽性と連鎖した領域を見いだした。「Dunghanshali」由来の領域のうち2ヶ所は「Arroz da terra」由来の領域と共通していた。現在、特に強い影響度を示した2番染色体上の「Dunghanshali」に特異的な領域と、3番染色体長腕部のヨーロッパ産品種に共通する領域の原因遺伝子を単離するためにF3世代や各領域の準同一遺伝子系統BC2F2を用いて解析を行っている。また新規に作出したイネ突然変異集団から低温発芽性の良い突然変異体を複数単離したので報告する。