抄録
高等植物の細胞壁は細胞の成長にともなって活発に代謝されている。演者らはこれまでにギンドロ培養細胞を用いて成長過程における細胞壁多糖類の変化について研究し、細胞の伸長成長期にペクチンの中性糖側鎖を構成するガラクタンの代謝が活発に起きていることを明らかにしてきた。本研究では培養液中に分泌されるガラクタン分解酵素の活性変動を調べるとともに酵素の精製を行いその特性を明らかにすることを目的として実験を行った。
培養液中のガラクタン分解活性は培養10~14日目の伸長成長終期に急激に増加した。細胞壁中の活性は伸長成長が活発な培養6~10日目に高まり、その後減少することからこの酵素が細胞壁から培地中に分泌されると考えられた。そこで培養14日目の培地から硫安沈殿により粗酵素を回収し精製を加えた。粗酵素液に対して陰イオン交換、疎水、陽イオン交換、及びゲル濾過クロマトグラフィーを行い比活性で約100倍に精製した。精製した酵素はSDS-PAGE上で約70 kDaのメジャーなタンパク質と66 kDaのマイナーなタンパク質を含んでいた。メジャーなタンパク質の分子量は細胞壁から精製したガラクタン分解酵素のうちの一つとほぼ一致していた。また、精製した酵素の至適温度は約40℃、至適pHは約5.5でありこれまでに報告されているガラクタン分解酵素と一致していた。発表ではさらにいくつかの特性について報告する予定である。