抄録
オーキシン輸送阻害剤を使用した研究は、オーキシンの極性輸送の機能と役割を明らかにする上で重要である。N-1-ナフチルフタラミン酸(NPA)はオーキシン極性輸送の阻害剤であり、その作用はシロイヌナズナの胚軸において伸長および偏差成長の抑制を引き起こすことが知られている。しかしながら、これらの成長阻害に関わる分子メカニズムの実体は不明である。
最近、我々はオーキシンの輸送に関わるPGP19が、光に応答した偏差成長に重要な役割を果たしていることを明らかにした。そこで偏差成長に関わるPGP19の分子機能を解明するために、pgp19欠損株胚軸の成長に対するNPAの効果を調べた。その結果、NPAによってpgp19の胚軸伸長は野生株と同様に阻害されるものの、偏差成長においてpgp19はNPAに非感受性であり、正常な光屈性と重力屈性を示すことが明らかになった。さらに、オーキシンレポーター遺伝子DR5:GUSを用いて野生株およびpgp19胚軸のオーキシン分布を観察した。その結果、NPAはオーキシンの偏差的な分布を、PGP19を介して抑制していることが示唆された。これらの結果は、偏差成長を抑制するためのNPAの標的が、PGP19を含むオーキシンの横方向の分配機構であることを示唆している。これに加えて、オーキシンの横方向の分配に関わるもう一つの因子PIN3とPGP19の二重変異体の表現系解析についても報告する。