日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナ胚軸のフィトクロムとPGP19による偏差成長の制御
*永島 明知山口 由紀子古川 聡子小柴 共一黒羽 剛岡田 清孝酒井 達也
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p. 0343

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抄録
胚軸の光屈性に働く偏差成長は、青色光受容体であるフォトトロピンに強く依存している。一方、赤色光受容体フィトクロムによる光屈性の調節機構の存在も示唆されている。我々はこの調節機構を明らかにするために、赤色光下で明確な胚軸屈曲を示す変異株 flabby を単離した。その原因遺伝子はABCトランスポーターファミリーに属するPGP19であり、オーキシン輸送に関わることが知られている。そこで、赤色光がオーキシンの極性輸送と分布に与える影響を観察した。その結果、(1)赤色光照射は黄化芽生え胚軸の求基的な極性輸送に対し抑制的に働き、これがフィトクロムとPGP19に依存することと、(2)赤色光照射とPGP19の欠損は偏差成長に必要とされる横方向のオーキシン勾配形成を促進することが明らかとなった。またPGP19について発現解析を行ったところ、(3)胚軸中のPGP19タンパク質量はフィトクロムによって負の制御を受けることが明らかとなった。これらのことより、赤色光により活性化されたフィトクロムはオーキシンの輸送制御を介して胚軸の偏差成長を調節しており、PGP19がこれに対し抑制的に機能すること、そしてフィトクロムはPGP19のタンパク質量を減少させることで偏差成長を促進することが示唆された。これに加えて、青色光およびオーキシン輸送・応答関連因子が上記の偏差成長に与える影響についても報告する。
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© 2008 日本植物生理学会
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