抄録
種子貯蔵タンパク質は登熟期に小胞体で前駆体として合成され,小胞輸送によりタンパク質蓄積型液胞に運ばれた後,プロセシングを受けて成熟型になる.貯蔵タンパク質の細胞内輸送機構を明らかにする目的で,私達は種子に貯蔵タンパク質の前駆体を異常蓄積するシロイヌナズナmaigo変異体を単離し解析してきた.新規の変異体であるmag4変異体の種子細胞には,電子密度の高いコアを含む直径1 μm程度の新規構造体が多数蓄積していた.この構造体の周囲はリボソームに覆われており,小胞体由来の構造体であると考えられた.免疫電子顕微鏡観察により,新規構造体のコアは貯蔵タンパク質2S albuminの前駆体の凝集体であり,その周辺の電子密度の低い部分に12S globulinが局在することが明らかになった.マップベースクローニングにより同定したMAG4遺伝子は,動物のp115に相同性を示すタンパク質をコードしていた. p115タンパク質は小胞体とゴルジ体間の小胞輸送に関与するtethering factorであると考えられている.MAG4-1対立遺伝子にはスプライシング部位を含む19塩基の欠失が見られ,スプライシング異常により5アミノ酸が欠失したMAG4タンパク質が合成されると予測された.この領域は,MAG4タンパク質の機能発現において重要であると考えられた.現在,MAG4タンパク質の機能解析を行っている.