抄録
リンゴの開花は年に一度で、花芽の分化は前年の夏に始まる。これまでこの分化時期に発現する花成制御相同遺伝子(AFL, MdTFL, MdFT)のリンゴへの働きを解析してきた。今回シロイヌナズナFT遺伝子に相同なリンゴMdTFLおよびLEAFY遺伝子相同なAFL2遺伝子の発現をISH法で詳細に解析し、かつ定量PCRで発現量の変動を測定した。MdFT遺伝子は栄養成長時の茎頂や葉や根に比べ花芽茎頂で強く発現していた、しかし花芽分化ステージでの変動は見られなかった。一方AFL2は栄養成長より花芽茎頂部の発現が強いが、花芽シュートの成長、分化時に発現が高く茎頂全体で発現が見られるのに対して、伸長や分化の停止時に外衣に発現が局在する傾向が顕著に観察された。さらに、これらの遺伝子を導入した組換え体リンゴを作出したところ、MdFT組換えリンゴでは導入遺伝子の発現量に応じた花芽形成が観察された。ポット苗で誘導された花は、単生花で花弁が多く雌ずいの形成が未発達のものが多く見られ、花の形成はシュート頂や腋芽から連続して起こった。一方AFL2を導入し発現が確認された組換えリンゴでは、栄養成長を続け2~3年を経過した時点でも花の形成は認められなかった。これはAFL1導入組換えリンゴでも同様であった。以上の結果から今回解析した遺伝子のリンゴ花成への働きを考察する。