抄録
気孔とは一対の孔辺細胞に囲まれた間隙であり、日周期や環境変化に応じて開閉運動を行う。孔辺細胞のアクチン繊維は気孔開閉運動に関与することが示唆されているが、その動態に関しては不明な点も多い。本研究ではGFP-ABD2によりアクチン繊維を可視化したシロイヌナズナ植物体を作出し、スピニングディスク式共焦点レーザー顕微鏡により終日約500対の孔辺細胞アクチン繊維の顕微鏡画像を取得した。一方、一連の顕微鏡画像 セットからアクチン繊維の配向や束化の指標となる複数の特徴量を半自動的に計測する画像解析システムを開発し、アクチン繊維構造の日周変化について検討した。その結果、開口時には放射状に配向したアクチン繊維の束が出現し、閉口時には束がほどけてランダムに配向することが定量的に示された。さらに、アクチン繊維の配向と束化の指標に基づいて個々の孔辺細胞対の顕微鏡画像クラスタリングを試みたところ、4つの特徴的なクラスに分類された。これらの細胞が全体に占める割合を日周期を通して測定したところ、約4割の範囲でダイナミックに変動していることが明らかになった。以上の結果から、孔辺細胞アクチン繊維の配向変化や束化は日周期に応じて協調的に調節されている可能性が示された。現在、アブシジン酸や光処理による気孔開閉誘導時における解析も進めており、その結果と併せて孔辺細胞アクチン繊維の制御機構に関して議論したい。