日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

低温ストレスにより生じるイネ酸化タンパク質の解析
*丹野 有里子猿山 晴夫上村 松生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0449

詳細
抄録
イネを始めとする低温感受性植物では、低温傷害過程で活性酸素が大量に発生し、傷害を引き起こす一方、活性酸素除去系酵素を持つことで傷害を回避することが知られている。我々はすでにコムギカタラーゼ遺伝子を過剰発現させたイネが野生型イネよりも高いカタラーゼ活性を維持すること、形態上でも葉の萎れが遅延することを明らかにした。しかし、形質転換体が低温耐性を獲得した詳細なメカニズムに関しては不明なままである。今回、我々は、低温下で形質転換体が低温耐性を獲得したのは、高いカタラーゼ活性が低温耐性に関与するタンパク質の酸化を防ぎ、その機能を維持したためと推定し、低温下で酸化されるタンパク質の存在を明らかにすることを試みた。低温下では、根の吸水能力の低下により葉の傷害が生じることが知られているため、我々は根に着目し、根のみ低温に曝す実験系を用いた。まず、電解質漏出法の結果、葉では根よりも傷害を受けること、形質転換体では野生型よりも傷害が抑制されることが分かった。また、野生型では低温暴露により大幅に酸化タンパク質が増加するが、形質転換体では酸化タンパク質の増加抑制が見られた。この結果から、形質転換体は低温下での酸化タンパク質の発生を抑制し、低温耐性を獲得することが示唆される。現在、細胞分画後の酸化タンパク質の解析を行っており、細胞内局在を考慮した解析結果も報告する予定である。
著者関連情報
© 2008 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top